家族関係がうまくいかない。40代・50代の男性から、意外と多く聞く悩みです。
仕事では成果を出している。収入も安定している。なのに、家に帰ると居場所がない。妻との会話が減った。子どもが話しかけてこなくなった。
私自身、長い間この問題を抱えていました。そして、ある考え方を手放したことで、家族関係は一気に改善しました。
それは「俺が稼いでいる」という意識です。
家族関係がうまくいかない本当の原因
多くの家庭で関係がギクシャクする原因は、意外と単純です。
それは、家庭に上下関係を持ち込んでいることです。
・親だから正しい
・夫だから偉い
・稼いでいるから上
私は長い間、無意識に「自分が稼いでいる」という意識を持っていました。正直に言えば、それは責任感ではなく、優越感だったと思います。
「家族を養っている」という自負が、いつの間にか「だから自分の意見が通るべき」「だから感謝されて当然」という歪んだ思考に変わっていました。
アドラー心理学が示す「対等」という考え方
心理学者アルフレッド・アドラーは、家族関係において立場や役割による上下は存在しないと考えました。
ここで言う「対等」とは、能力・役割・責任が同じという意味ではありません。
対等とは何か
人格として上下をつけない:収入の多さ、社会的地位、年齢などで人間としての価値に優劣をつけない。
相手を支配しない:自分の思い通りにコントロールしようとしない。命令や強制で動かそうとしない。
自分の価値を相手より上に置かない:「自分の方が正しい」「自分の方が貢献している」という比較をしない。
つまり、「誰が正しいか」ではなく「どう協力するか」という視点です。
「俺が稼いでいる」という思考が生む歪み
この思考を持っていた頃の私は、以下のような状態でした。
感謝されて当然だと思っていた:毎日働いて家族を養っているのだから、感謝されるのは当然。感謝がないと不満を感じていました。
意見が通らないと不満だった:自分が一番貢献しているのだから、自分の意見が優先されるべき。反対されると腹が立っていました。
無意識に命令口調になっていた:「〜しろ」「〜するな」「なんで〜しないんだ」。お願いではなく、指示や命令が多くなっていました。
これは家族を守っているつもりで、実際は関係を壊す火種を撒いていただけでした。
「対等」を意識して起きた変化
ある時、「対等」という考え方を意識的に持つようにしました。
すると、不思議なことが起きました。
① 感謝が自然に生まれた
対等な視点で見ると、家族がやってくれていることの価値が見えてきました。
・毎日の家事をしてくれている
・子育てを担ってくれている
・家庭を回してくれている
・自分が仕事に集中できる環境を作ってくれている
それまで「当たり前」だと思っていたことが、全てありがたい行為に見えるようになりました。
お金を稼ぐことと、家庭を守ることは、どちらが上でも下でもありません。役割が違うだけです。
② 夫婦関係が明確に改善した
上下関係ではなく、チームになった感覚が生まれました。
・正論でねじ伏せることがなくなった
・話し合いが増えた
・無駄な衝突が激減した
・相手の意見を聞こうという姿勢が生まれた
「関係改善」というより、無駄な争いを自分が作っていたと気づいた、が正確な表現です。
妻は敵ではなく、同じ目標に向かうパートナー。この当たり前のことに、ようやく気づけました。
③ 子どもとの関係も良好になった
子どもに対しても、意識を変えました。
・命令しない
・感情で支配しない
・選択と責任を尊重する
・一人の人間として向き合う
これを意識すると、驚くほど信頼関係がスムーズになります。
「親の言うことを聞かせる」関係ではなく、「親を信頼してもらう」関係に変わりました。
子どもは親の所有物ではありません。一人の人格を持った人間です。この当たり前のことを、私は長い間忘れていました。
家族との「適度な距離感」が関係を良くする
対等な関係を築く上で、もう一つ大切にしていることがあります。
それは「近すぎず、離れすぎず」の距離感です。
家族だからといって、四六時中一緒にいる必要はありません。むしろ、適度な距離があった方が、お互いを尊重できます。
「それぞれがやりたいことをやる」という方針
私の家庭では、「みんな自分自身でやりたいことをやる」という方針を大切にしています。
妻には妻の趣味や時間がある。子どもには子どもの世界がある。そして私には私の仕事や趣味がある。
家族だからといって、全ての時間を共有する必要はありません。それぞれが自分の人生を充実させながら、家族としてもつながっている。この形が、私たちには合っています。
相手を束縛しない、干渉しすぎない、でも必要なときはそばにいる。この距離感が、長く良い関係を続ける秘訣だと感じています。
相手の領域には口出ししない
もう一つ、私が決めていることがあります。
家事や子育てなど、妻がメインでやっていることには一切口出ししない、ということです。
料理の味付け、掃除のやり方、子どもへの接し方、日用品の選び方。これらは妻が日々向き合い、試行錯誤しながら積み上げてきたものです。
詳細をよく分かりもしない人間が口出ししても、意味はありません。むしろ、相手のやる気を削ぎ、関係を悪化させるだけです。
なぜ口出しは良くないのか:
・現場を知らない人間の意見は的外れになりやすい
・「自分のやり方を否定された」と感じさせてしまう
・結局やるのは相手なので、口だけ出すのは無責任
・信頼していないというメッセージになる
もちろん、意見を求められたら答えます。しかし、求められていないのに「こうした方がいい」「なんでこうしないの」と言うのは、相手の領域を侵害しているのと同じです。
仕事でも同じではないでしょうか。現場を知らない上司が細かく口出ししてきたら、やる気がなくなります。家庭も同じです。
任せると決めたら、信頼して任せる。これが対等な関係の基本です。
個人の時間を尊重するメリット
お互いにストレスが減る:一緒にいすぎると、小さなことが気になってイライラします。適度な距離があると、寛容になれます。
会話のネタが増える:それぞれが違う経験をしているので、話すことがあります。ずっと一緒だと、話題がなくなります。
相手への感謝が生まれる:離れている時間があるからこそ、一緒にいる時間の価値がわかります。
自分自身が充実する:自分の時間を持つことで、精神的な余裕が生まれます。その余裕が、家族への優しさにつながります。
週1回の「夫婦の時間」を意図的に作る
適度な距離感を保ちながらも、意図的にコミュニケーションの時間を作ることも大切です。
私は妻と週に1回、2人きりでカフェに行く時間を作っています。
好きなスイーツを食べながら、ゆっくり話す。特別なことを話すわけではありません。最近あったこと、考えていること、子どものこと、何気ない会話です。
なぜ「意図的」に時間を作るのか
忙しい日常の中で、夫婦でゆっくり話す時間は自然には生まれません。
家にいると、家事や子どもの世話、仕事の連絡など、やることが次々と出てきます。気づけば、夫婦の会話は事務連絡だけになっていた、というのはよくある話です。
だからこそ、「この時間は2人で過ごす」と決めておくことが重要です。
週1回のカフェ時間で得られるもの
リラックスした状態で話せる:家の外に出ることで、日常のモードから切り替わります。カフェの落ち着いた雰囲気が、穏やかな会話を促してくれます。
相手の考えを知る機会になる:普段聞けない話が出てくることがあります。「実はこう思っていた」「最近こんなことを考えている」。こうした話は、忙しい日常では出てきません。
関係のメンテナンスになる:定期的に話すことで、小さな不満やすれ違いが大きくなる前に解消できます。問題が小さいうちに気づけます。
「大切にされている」と感じてもらえる:忙しい中でも時間を作ってくれる。それだけで、相手は「自分は大切にされている」と感じます。
始め方のポイント
曜日と時間を固定する:「毎週土曜の午後」など、決めておくと習慣化しやすいです。
場所は相手の好みに合わせる:妻が好きなカフェ、食べたいスイーツがある店。相手が楽しめる場所を選んでください。
スマホは見ない:せっかくの時間なので、スマホは鞄にしまって、相手との会話に集中してください。
議題を決めない:「何を話そう」と構える必要はありません。自然に出てくる話題で十分です。
なぜ「稼いでいる」意識が生まれるのか
この問題の根本には、自己肯定感の低さがあると思います。
仕事での成果や収入でしか、自分の価値を証明できない。だから「稼いでいる」ことを家庭内での優位性に変換しようとする。
しかし、家族はビジネスパートナーではありません。成果や貢献度で関係が決まるわけではないのです。
家族に求められているのは、「稼ぐ人」ではなく「一緒にいたい人」です。
対等な関係を築くための具体的な方法
意識を変えるだけでなく、具体的な行動も変えていきました。
① 「ありがとう」を口に出す
当たり前だと思っていたことに、意識して感謝を伝えるようにしました。
「ご飯ありがとう」「掃除してくれてありがとう」「子どもの送り迎えありがとう」
最初は照れくさいかもしれません。しかし、言葉にすることで、自分の意識も変わっていきます。
② 命令形を依頼形に変える
「〜しろ」「〜するな」ではなく、「〜してくれる?」「〜してもらえると助かる」に変えました。
言い方を変えるだけで、相手の受け取り方は全く違います。そして、自分の中の「上から目線」にも気づけます。
③ 相手の意見を最後まで聞く
途中で遮らない、反論を考えながら聞かない、まず受け止める。
これだけで、相手は「尊重されている」と感じます。対等な関係の基本です。
④ 「正しさ」で勝とうとしない
議論に勝っても、関係は負けます。
正論で相手をねじ伏せても、相手の心は離れていきます。大切なのは「どちらが正しいか」ではなく「どうすれば良い関係を築けるか」です。
⑤ 相手の領域を尊重する
家事や子育てなど、相手がメインで担当していることには口出ししない。任せると決めたら、信頼して任せる。
手伝いを求められたら手伝う、意見を求められたら答える。しかし、求められていないのに口を出すのは控えてください。
厳しいことを言います
家族関係が悪い原因を「相手の性格」「子どもの態度」「時代のせい」にしているうちは、一生変わりません。
多くの場合、問題は一つです。
自分が上に立とうとしていること。
これに気づけた家庭から、関係は改善します。
私自身、この事実を認めるのに時間がかかりました。自分が問題だったと認めるのは、プライドが傷つきます。
しかし、そのプライドこそが、家族との関係を壊していた原因でした。
この記事のまとめ
「俺が稼いでいる」という考えを手放したことで、私は家族との関係を失わずに済みました。
家族関係の原則:
・家族は管理対象ではない
・正しさで勝っても、関係は負ける
・対等になった瞬間、感謝が生まれる
・収入の多さは人間としての価値とは関係ない
・家族に求められているのは「稼ぐ人」ではなく「一緒にいたい人」
良い関係を保つコツ:
・近すぎず、離れすぎずの距離感を保つ
・それぞれがやりたいことをやる自由を尊重する
・相手の領域には口出ししない、信頼して任せる
・週1回など、意図的に2人の時間を作る
・日常から離れた場所で、ゆっくり話す
もし今、家庭で孤独を感じている、夫婦関係が冷えている、子どもと距離を感じる。そうであれば、変えるべきは相手ではなく、自分の立ち位置です。
上から見下ろすのではなく、横に並ぶ。口出しするのではなく、信頼して任せる。この意識の変化だけで、家族関係は驚くほど変わります。
そして、週に1回でいいので、パートナーと2人きりで過ごす時間を作ってみてください。カフェでスイーツを食べながら、ゆっくり話す。それだけで、関係は確実に良くなります。
40代・50代からでも遅くありません。今日から、対等なパートナーとして家族と向き合ってみてください。

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